【読書のススメ】千と千尋を観たときの圧倒される感覚(手のひらの音符/藤岡陽子)
素晴らしかった。
とにかくこの本を読めたことに心の底から感謝したい。
感想は一言では言い表せないけれど、私の大好きな千と千尋の神隠しを観たときの圧倒されるような感覚と同じものを感じた。
とにかくひとりでも多くの人に読んでほしい。
この本を読まないのは本当にもったいない。
登場人物全員のことがとにかく大好きになる。
小中高、教室にいたクラスメイトと重ね合わせて読んだ。
全てが印象的すぎるけれど、私が一番腑に落ちたのは、誰からも愛されて、将来を期待されるような人は、なぜか早く亡くなってしまうということ。
知人で、若くして亡くなった人がいた。
いつも周りにいる人を笑顔にしていた人だった。
思い出すのはいつもニコニコしている姿。
勉強もスポーツもなんでもそつなくこなし、友達も多かった。
たくさんの人から愛されていた。
ある日突然、亡くなったと聞いた時は、本当に冗談だと思った。
悪い冗談で、びっくりしたでしょ?と笑いながら、種明かしをされるに決まっていると本気で思った。
いつになったら、種明かしされるのか。
待てど暮らせどそんな知らせはなく、布団に横たわり、いつまでたっても起きてこない姿を目の当たりにして、亡くなったときちんと理解した。
こんな悲しいことが世の中にあるのだとそのとき初めて知った。
今でも、その光景は忘れられない。
子供の時にそんな経験をすることの過酷さは想像の遥か向こう側にある。
そんな中でも、なんとか自分の足で立って、生きていこうとする姿に胸を打たれた。
どうにかして元気になってほしいという周りのやさしさにも涙があふれた。
人はひとりきりでは生きていけないのだと思う。
辛いときや苦しいときに、それを乗り越えるのはほかならぬ自分自身だけれど、振り返ってみると、そういうときに支えてくれてた人が必ずいた。
何も言わずにそっと寄り添ってくれるその温かさがどれだけありがたかったか。
仕事、恋愛、人間関係などなど、理不尽なことを挙げれば尽きない。
ただ、生きていくということは理不尽なことだらけなのだと思う。
その理不尽さと対面したときの闘い方は人それぞれなのだろう。
正浩の言葉がすーっと入ってきた。
それから人との出会いと別れについても考えさせられた。
これまで何人の人と出会い、別れてきたのだろう。
学校の卒業式で別れて以来、会わなくなってしまったたくさんのクラスメイト達の顔が浮かんできた。
あの当時は毎日毎日顔を合わせ、それが当たり前だった。
卒業式を境にもう何十年も会わなくなるなんてことの方が非現実的だった。
子供だったから仕方ないよな。
今ならわかる。
毎日顔を合わせ、同じ方を向いて、同じことを勉強した日々がどんなに尊いものかということ。
ずっと続くような気がしていた毎日は、いつかは必ず終わりが来ること。
そして、生きているうちにもう二度と会わない人もいるのだということ。
会いたくても会えなくなる日が来ること。
たくさんの思い出も大人になると忘れてしまうこと。
人と別れるとき、これで会うのは最後ですよ!と何か合図でもあればいいのになと思ってしまう。
そうすれば、心置きなく、ありがとうもさよならも言えるはずなのに。
たくさんの人にお世話になってきたけど、その中の多くの人はもう再会することはないのかもしれないと思うと、とても寂しい気持ちになる。
周りにいる人達にきちんとありがとうと言おうと思った。
いつでも言えると思っていても、別れはこちらの意図に反してやってくるから。
そして、目の前にいる人をもっともっと大切にしようと思えた。