【読書のススメ】みんな幸せでみんな不幸(本屋さんのダイアナ/柚木麻子)
話題になっていた本でしたが、ぐいぐいと引き込まれた。
文章が優しくて、平日の寝る前に心底癒されながら読んだ。
ページが少なくなるのが寂しくて仕方がなかった。
優等生で美人で裕福な彩子。
金髪で美人で片親のダイアナ。
正反対な二人はすぐに仲良くなる。
自分にはないものを相手が持っていることに羨望と少しの嫉妬を抱えながらも、お互いを大切にしながら日々を送っていく。
この本にはいろんなタイプの女の子、女性が出てくる。
彩子とダイアナと二人の母親と二人のクラスメイト。
全員の気持ちが理解できる。女性ならではの複雑な気持ち。
自分にないものを持っている人は、幸せに違いない。
悩みなんてあるはずがない。
そんな風に思ってしまいがちだけど、実際、その立場になってみないと全くわからない。
悩みが一つもない人なんていないのだ。
みんな平等に試練がある。そのタイミングは人それぞれに違うから、自分が悩んでるときに周りが幸せそうに見えてしまうだけで。
何不自由なく生活でき、勉強に打ち込むことができる彩子が感じる閉塞感やしんどすぎる虚無感。
水商売で働く自由な母親に大穴(ダイアナ)と名付けられ、その特異な名前にいつどんなときも振り回され、経済状況から進学を諦めなければならないダイアナ。
二人とも理不尽な思いをしながら大人になっていく過程が描かれている。
どちらかが幸せでどちらかが不幸ということはない。
どちらも幸せでどちらも不幸なときもある。
与えられた境遇は変えることができない。
でも、それに打ちひしがれて何もしないのはただの怠慢である。
彩子もダイアナもなりたい自分になろうと懸命に前を向いている。
時に横やりが入り、他者に邪魔されても、きちんと軌道修正して、前に進んでいる。
呪いにかかったとしてもきちんと自分でその呪いを解いている。
自分の人生の責任が取れるのは自分だけ。
なりたい自分になれるのも自分だけ。
環境のせいにしたり、人のせいにして文句を言うのは呪いにかかっている証拠なんだと思った。
そして、自分の名前を改めて考えてみるいい機会になった。
名前に込められたような生き方ができているだろうか。