お前はまだ若い、なんとか救ってやりたい(森絵都/カラフル)
森絵都さんのカラフルは私の人生になくてはならない大切な本だ。
今まで何度も読んできたし、これからも何度も繰り返し読み続けることは間違いない。
今、生きるのが辛いなーしんどいなーと思ってる人は手に取ってみてほしい。私自身、もう生きるのなんてウンザリだと思ってしまう時、必ず読み返してきた。
カラフルは読むときの自分の状態で、心を揺さぶられるところが変わる。
初めのうちは、中学生の主人公真目線で物事を見ていたが、社会人になってしばらくして、今度はお父さんの方がすんなりと感情移入できることに驚いた。真は視野が狭いなー、大人になったらそうは言ってられないよーと読了することもあった。
今回読み直してみて、またこの本の新たな素晴らしさに気がつくことができた。すごい本だということはすでにわかっているつもりだし、魅力を知り尽くしてると思っていたけど、やっぱり読み返すごとに新たな発見があると感じた。
今まで気にすることもなかったお父さんの言葉に今回ひどく心を打たれた。
『お前はまだ若い、なんとか救ってやりたい、とできるかぎりのことをしてくれた』
話の流れからすると、さほど重要な言葉ではなく、状況を説明してるにすぎないので、これまでは何も感じることなく読んでいた。
だけど、『お前はまだ若い、なんとか救ってやりたい』というのは作者の森さんがこの本を書いた理由なんじゃないかと思えたのだ。
この本は死生観に関する話が出てくる。だから、私は森さんがこの本に込めたメッセージをずっと知りたかった。
それは読者自身が、導き出すものかもしれないけど、私は宝物の本だからこそ、本当のところはどうなのか聞きたくて仕方なかったのだ。
これまで読んできた中で、カラフルというタイトルにいろんな想いが詰められているんだと解釈していた。
それはまちがいないのだけど、その先にある想いみたいなものを知りたかったのだ。
今回読んで、お父さんの
『お前はまだ若い、なんとか救ってやりたい』
が森さんがこの本を書いた答えのような気がした。
そして、私もこの本を読むことで本当に救われてきた。
受験に失敗した時、就職が不安でいっぱいだった時、恋人と別れた時、人間関係に疲れた時。
折に触れて読み返し、そのたびにパワーをもらえたのは、森さんの『お前はまだ若い、なんとか救ってやりたい』という気持ちが、この本に込められているからだとわかった。
生きている意味がわからない、毎日辛く苦しいことばかりでどうしたらいいかわからない と思う若い人は多いと思う。そんな人はぜひこの本を読んでほしい。
私も30年以上生きてきてなお、生きている意味が全くわからず、辛く苦しいことばかりの人生にがっかりすることばかりである。
でもお父さんが、『あの一瞬の喜びは、それまでのすべてを清算してあまりあるものだったよ』と言っている。今はまだわからないけど、何十年と積み重ねてきた年月の中で、これまでの辛く苦しい想いを全てを清算してあまりある喜びが待ってるんだと思う。
それがくるのはいつかわからない。寿命が尽きる直前かもしれないし、あと10分後かもしれない。
だから辛く苦しいと感じながらも、私は本を読みながら、これまで進んで来れたのかもしれない。
改めて、カラフルという偉大な本に出会えてよかったと思うし、この本を全ての人に読んでほしい。