【読書のススメ】どん詰まりのときの癒し本(ハゴロモ/よしもとばなな)
好きな本TOP10に入る本。
本の裏に書かれているあらすじを見て、藁をもすがる思いで初めて手に取ったことを覚えている。
失恋の痛みと、都会の疲れをいやすべく、ふるさとに舞い戻ったほたる。
大きな川の流れるその町で、これまでに失ったもの、忘れていた大切な何かを、彼女は取り戻せるだろうか…。
(中略)
ほっこりと、ふわりと言葉にくるまれる魔法のような物語。
当時何があったか思い出せないけど、たぶん、恋愛がうまくいっていなかったから、どうにか自分の気分を通常運転に戻したいと思っていたような気がする。(笑)
それ以来、ほっとしたいときに定期的に読むようになった大切な本。
それから、肌寒く、秋の季節を感じるようになると、必ず読んでいる。
タイトルの「ハゴロモ」の響きが大好きなのだけど、この本の内容もタイトルに集約されている気がする。
とにかく、読み終わった後に羽の衣(羽衣=ハゴロモ)をまとったかのように心も気分も軽くなるのが分かる。
人の、意図しない優しさは、さりげない言葉の数々は羽衣なのだと私は思った。
この一節は、あまりにも印象深く、普通に生活していても時々出てくる。
仕事で先輩によくしてもらったときや、一緒に飲みに行ってくれた同期が何も言わずに話を聞いてくれたときに。
主人公のほたる以外にも、登場人物たちが直面する問題は重く、苦しい。
だけど、この本を読むと、みんな何かしら、辛く苦しく思い通りにならないことを抱えながら、それでも日々を精一杯過ごしていて、辛いのは自分だけじゃないんだと思えてくる。
自分以外の人は平気な顔して毎日生きてるように思ってしまうこともあるけど、順風満帆に物事が進んでいる人なんて果たしてこの世界のどこかにいるのだろうか。
なんの不平不満もなく、全部が自分の思い通りになってる人。
いるかもしれないけど、そうじゃない人の方が大多数だと思うのだ。
なんでこんな思いをしなくちゃいかんのだ、とか、自分の理想とはかけ離れていて何やってんだろう、とか、何をするために生まれてきたんだろう、とか、答えの出ないことをぐるぐる考えてしまうどん詰まりの時もあるけど、そういう時に、ハゴロモはいつも優しく寄り添ってくれる。
そして、うまくいかないなーなんだかなーと思っているのは自分だけではないから、頑張ろうと思わせてくれる。
それから、やっぱりどん詰まりの時は、ひとりでいないで人に会うのが一番いいのかもしれないな、と今回再読して思った。
失恋だとか、仕事で躓いたとか、そういう時に、ひとりで自分と対峙する時間は絶対必要だけど、でも、ちゃんと自分と向き合ったら、今度は、人と向き合って、どんよりとした空気を一掃して、現実世界に戻ってこなくてはいけないと思う。
なんとか前を向いて、明るく生きていく努力を、なんとしてでもしなくてはならない。
一人で完璧にそれをするのはかなり難しいと思うのだ。
だから、人と会って話をするのって大きいなと再確認した。
ひとりでいるのは嫌いじゃないけど、辛いときやしんどいときにひとりでいるのは絶対逆効果だと思った。自分の殻に封じ込められ、永遠にその殻から出られなくなってしまうような恐怖すら覚える。
又吉さんの「人間」でも描かれていたが、きっとみんな人間をやるのがへたくそなんだと思う。
でもきちんとそういうへたくそな部分と向き合っている人はかっこいい。
よしもとばななさんが、あとがきで、
どうにもほっとできない気持ちの中にいる人が、ふと読んで、何のメッセージを受け取るでもなく、ただちょっとだけ苦しみのペースを落とすことができたらいいな、と思います。
と書かれているけれど、まさに私にとっては最大限の癒しを与えてくれる一冊になった。