【読書のススメ】不思議な世界観(風花/川上弘美)
圧倒的な世界観でした。
主人公の性格からなのか、読んでる間、ずっと静かさが漂っていて、不思議な感覚になりました。
主人公が『のゆり』という珍しい名前のため、初めのうちは『のゆり』という名前が出てくるたびに引っかかってしまっていたのですが、読み進めるうちに引っかかりがなくなり、どんどん引き込まれていきました。
やっぱりこの本の世界観は『のゆり』という名前だからこそ生まれたものだと思ってしまうくらいに、存在感がありました。
叔父が主人公を"ゆりちゃん"とあだ名で呼ぶシーンが何度も出てくるのですが、それが独自の世界観と現実とを結びつけてくれるような役割をしていました。
浮世離れせずに、妙に現実味を帯びているのはこのあだ名あってこそだと思いました。
主人公と旦那が全くうまくいっておらず、家の中でのシーンは気まずさに息が詰まりそうだったし、身勝手すぎる旦那に勝手に傷ついてイライラしてしまったけど、思いもよらないことが起こったとき、感情に任せてものを言ったり、決断を下すのは得策じゃないと痛感しました。絶対にきちんとした判断ができないから。
旦那に何度も裏切られている主人公が怒りや悲しみを露わにしなかったので、読んでいる間ずっと静けさを感じていたのかもしれないのですが、仕事終わりのヘトヘトの身にはこの静けさが癒しになりました。