【読書のススメ】アラサーに読んでほしい一冊(ここは退屈迎えにきて/山内マリコ)
気がついたらここ一年くらいはおニュー本はエッセイしか読んでこなかったことに気がついた。小説はお気に入りの本ばかりを読み返していた。
意図的にそうしていたわけではないのだが、昨日、ふと手にした山内マリコさんの本。
ここは退屈迎えにきて
あたしたちよくやってる
どちらもタイトルに惹かれて、手にして何気なく読み始めたのだけれども、
ここは退屈迎えにきて
は我を忘れて読んだ。
久々の小説だったからか理由は分からないけれど、自分が本の中にすっぽり入り込んでしまったかのような感覚。
昔、みんなの憧れで、カリスマ的な人気を誇る男子がいた。
カッコよくて、スポーツも勉強もなんでもそつなくこなして。
友達が多くて、後輩からは慕われて。
とにかく華があって、目で追ってしまう。
ヒエラルキーの一番上にいた人。
過去の好きだった人リストに入ってる人。
この小説に出てくる椎名みたいな男子は誰にでも思い出の中に絶対にいると思う。
少なくとも私にはいた。
だから、タイムスリップして、人気者で一目置かれるような椎名男子の人生辿ってるような気になった。
学生時代のまま、人気者で憧れられるような人生をスイスイ進んでいくもんだと信じて疑わなかった。
思い出の中の椎名男子は、ほんとにキラキラしていて、まさに青春そのものだったから。
だから本を読み進めるうちに、椎名男子に憧れてた日々が踏み潰されたような気になった。
椎名があまりにも冴えない、パッとしないただのおじさんになっていたから。
かっこよすぎた椎名が、その辺にいるおじさんになってしまった。
心底がっかりしている自分がいることに驚いた。
人気者でヒエラルキーのトップにいたはずの椎名が、誰からも相手にされずに小馬鹿にされることになるなんて。
学校という狭い世界では守られていたのだろうか。
自分で稼ぐ必要もなかった親の庇護のもとではスクールカーストのトップにいたのに、一歩外に出ると、こうまで変わってしまうことにもショックを受けた。
椎名をずっと昔から知っていたと錯覚するくらい小説の中に引きずりこまれて、心を持っていかれた。
それは地方都市の閉塞感がとても生々しくリアルに描かれていたことも要因だと思う。
忘れつつあったけれど、行くところが限定的で、やることのない地方特有の気だるさみたいなものや、都会への憧れがかつてあった。
長く住むと東京はたくさんのものがあるようでいて、実はなんにもないんじゃないかと思ってしまうことがある。
インスタにあげられている写真のように必死で加工してキラキラ見せているだけの幻みたいな。
とにかく何もかもがリアルでした。
読み終わってもしばらくは現実世界から戻ってくることができず。(笑)
頭の中が本の世界でいっぱいで。
読後の余韻に浸りたくて、テレビもつけず、無音のまま眠りにつきました。
家にいるときはテレビをつけるのが何故か習慣になっていたので、テレビを消したまま、家で過ごすのは、正直初めてでした。
読書熱がメラメラと燃え上がりそうな気がしてます。
地方出身のアラサーの方には是非読んでほしい一冊です。