【読書のススメ】深く揺るがない愛情(しずかな日々/椰月美智子)
- 作者: 椰月美智子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/06/15
- メディア: 文庫
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考えてみると、あの友達にあの時出会わなければ今の自分はいないだろうという人はたくさんいる。
それと同時に眩しいくらいにたくさん笑っていた日々が思い出される。
間違いなく自分が辿ってきた道だけど、現状との落差が激しいためか、どこか他人事のようにも感じてしまう。笑
この本は枝田少年の5年生の夏休みを中心に描かれている。
夏になると思い出したかのように毎年この本を手に取っているが、読むたびに、温かい気持ちで胸がいっぱいになる。
内気で引っ込み思案で友達のいなかった枝田少年。5年生の時、同じクラスになった押野との出会いや母元を離れて祖父と生活することをキッカケにし成長していく過程が描かれている。
ただ、少年の成長物語とは一言で片付けられないくらいの熱量が込められている。
ただ生きているだけの状態だった少年が生きる力を取り戻していくような、そんな力強さ。
ひとりぼっちで誰とも話さない日もあった枝田少年の日常は押野と出会うことで、鮮やかで賑やかに光り輝く。母親と2人だけの閉じた世界から飛び出し、楽しそうに毎日を送る様子が夏の情景とともに描写されている。
夏休み、学校のプールに行ったり、ラジオ体操に行ったり、自由研究した思い出が、記憶の片隅から蘇ってくる。
普段思い出すこともないけど、夏の暑さやプールから帰ってきたときの気だるさを覚えていることに驚く。
押野から惜しみなく溢れんばかりの友情をもらい、祖父からは静かで温かく強い愛情をもらう枝田少年。
人の優しさ、思いやりがたっぷり詰まっていて、疲れた心が癒されていく。
負の感情が消えて、自分の人生を自分らしく生きていくんだと思える。
小学校の夏休みを満喫した先にあるのが今の自分なのである。
今がどんな状況だったとしても、あのときの自分が夏を満喫していたことを覚えている。
そう思うと何故だか元気が出てくる。
夏を満喫していた自分に応援されたような気分になるからだろうか。